自然布とは「山野に自生する草や木の皮から糸をつくり、布を織り出したもの」具体的には、苧麻、芭蕉布、大麻、葛布、藤布などをいいます。
自然からいただいた材料、草の茎の外側にある繊維や、木の靭皮繊維で、気の遠くなるような手間と時間をかけ、細い糸をつくって布に仕立てていきます。
糸をつくることを、 綿やウールは「手紡ぎ」といいますが、自然布は「手績み」といいます。さらに芭蕉布と葛布は「結び」で、大麻やしな布は「撚り」で、つなぎます。
今回、レクチャーは、大麻、葛布、羽越しな布を聞いてきましたが、それぞれの繊維で布を作る方々の話からは、日本の失われそうな文化の継承の重要性、その繊維の存在意義が伝わってきました。
毎日、私たちが便利さや快適さから手軽に選んで使っている物、少しずつが大きな流れとなって歴史の流れを変えているのかも、と思うと物の選び方に新たな視点が加わります。たぶんそれは布だけじゃなくて様々なものに共通することかと思いました。
●大麻布
草を干し、水につけてから皮をはいで糸をつくります。日本では、一億二千年前の遺跡から発掘されるほど昔から使われていたのですが、戦後の工業化の波に負けてしまったと言われています。ちなみに、1962年に法律で「麻は苧麻と亜麻」と定められるまでは、大昔から「麻は大麻」を指していたそうです。夏はさらっと、冬は暖かいという日本の風土にもあっている布です。
大麻というと危険なイメージですが、魔除けやお清めの力があり、昔から神事には欠かせないもので、現在も免許を受けた地域で栽培されています。績む(うむ)ことの出来る方は現在数人。しかし最近は、人気が高まっているそうで、績むための講座が少しずつ行われているようです。
●葛布
植物の葛の茎の靭皮繊維を糸にして織り上げた布です。古墳時代から作られている布です。強靭で通気性のある素材で、羽織や袴などに用いられてきましたが、洋装化により需要が激減してからは、壁紙として輸出されていたそうです。
着尺、帯、ジャケット、バッグなどに仕立てられています。
●羽越しな布
シナノキ(根元15〜20センチ)の皮を剥いだ物を糸にしていきます。糸づくりから織りまでは、22の行程を1年の歳月かけて仕上げていきます。縄文の昔から存在している布、日本最古の織物といわれています。使われるほどにしなやかな風合いとざっくりとした味わいが増してくるそう。丈夫で水に強いので、昔は仕事着や、米袋、漁網に、今は帯時や日傘、バッグに仕立てられています。
(写真下、このシナノキから糸をつくっていきます。固い...)
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